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2017.11.08

理工学部物質生命理工学科の陸川政弘教授の研究グループが燃料電池のキーマテリアルの一つである高分子電解質材料(*1)(電解質膜と触媒層アイオノマー)の高次構造制御技術を確立し、プロトン(水素カチオン、H+)を輸送する”プロトン伝導パス”の形成とその最短化、さらにはその可視化技術を確立しました

高分子電解質形燃料電池(PEFC)の電解質材料における”高速プロトン輸送”と可視化を実現

上智大学は、2015年5月より新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)の事業において、「触媒・電解質・MEA内部現象の高度に連成した解析、セル評価」のテーマに関する委託研究を行って参りました。この度、本学理工学部物質生命理工学科の陸川政弘教授らと技術研究組合「FC-Cubic」の研究グループが、燃料電池のキーマテリアルの一つである高分子電解質材料(*1)(電解質膜と触媒層アイオノマー)の高次構造制御技術を確立し、プロトン(水素カチオン、H+)を輸送する”プロトン伝導パス”の形成とその最短化、さらにはその可視化技術を確立しました。

燃料電池内の高分子電解質材料は、アノードからカソード、または触媒にプロトンを輸送する役割(プロトン伝導性)があります。プロトン輸送を高速化することで燃料電池の高効率化・高出力が可能になり、結果として燃料電池のコスト低減にもつながります。本学では、電解質材料にブロック共重合体(*2) を用いることで、多彩なミクロ相分離構造(*3)を形成することを見出し(画像1)、これをプロトンの伝導経路(プロトン伝導パス)に利用することで高速プロトン輸送が実現することを明らかにしました。

ミクロ相分離構造の形態の一つであるシリンダー構造を電解質材料の厚さ方向に規則正しく並べることで(画像2)、規則性のないプロトン伝導パスからなる従来材料より、”プロトン伝導パス”が最短化し、大幅にプロトン伝導性が向上しました。また、このプロトン伝導パスを三次元的に可視化する技術を確立したことは、今後の材料設計開発の迅速化、多様化につながります。

NEDOは、2025年以降の燃料電池自動車(FCV)の本格普及期に求められる燃料電池の要求値(スタック出力密度:4kW/L以上、耐久性:50,000時間以上、等)を設定しています。これらの成果をもとに、高分子電解質材料において高速プロトン輸送を可能にし、FCVの本格普及期に求められる燃料電池の高効率・高出力化につなげていきます。また、これらの技術は、燃料電池の電解質材料のみならず、リチウムイオン電池などの電解質材料への応用も期待されます。

詳細は こちら (プレスリリース全文PDF)

※注釈

(1) 高分子電解質材料:固体高分子形燃料電池において使用される電解質材料。燃料電池の両電極間に位置し、プロトン伝導性を与えるとともに、隔膜としての機能を有する高分子材料。
(2) ブロック共重合体:ある一定の鎖長を有する2種以上のポリマー鎖(ブロック鎖)が共有結合で結合して一つの重合体になった高分子。
(3) ミクロ相分離構造:ブロック共重合体において、ブロック鎖の自己凝集により分子鎖(nm~数十nm)レベルの微視的な相分離を起こした構造。

本リリース内容に関するお問合せ先

上智大学理工学部物質生命理工学科 教授 陸川 政弘
TEL:03-3238-4250
E-mail: m-rikuka[at]sophia.ac.jp ※[at]を@に変換

陸川教授の略歴は  こちら

 

なお、このニュースは上智大学HPでも掲載されています。